DXや、サステナビリティと企業の社会的責任(CSR)に対する要求の高まりが顕著な時代。ホスピタリティ業界は、運営と戦略の枠組みを再定義する大きな転換期に差し掛かっています。 テレンス・ロンソンは、ホスピタリティの専門家であり、テクノロジー・コンサルタント、講師、発明家でもあります。環境・社会・ガバナンス(ESG)とCSRの目標を強化するため、ロンソン氏は先端テクノロジーを活用し、企業をサステナビリティ、イノベーション、社会的責任へと導く戦略案を提案しています。 この記事では、ネットワークのアップグレード、システム統合、インテリジェント、電気自動車(EV)、自動運転車(AV)、クラウドおよびSaaS (Software as a Service) コンピューティングへの移行を含む先進技術の統合に関するロンソン氏のビジョンの概要を説明します。 この変革ビジョンの基盤は、ネットワーク・インフラのアップグレードとクラウド・コンピューティングの導入にあります。従来の銅線ベースのネットワークから、最先端かつサステナブルなインフラに移行することで、業務効率と環境のサステナビリティが高まります。Wi-Fi 機能の強化はワイヤレス通信を容易にし、EV充電ステーションをサポートし、AVサービスの統合に備えます。 一方、クラウド・コンピューティングや SaaS コンピューティングへの移行は、データ管理や運用プロセスに革命をもたらし、スケーラビリティや柔軟性、セキュリティの向上、大幅なコスト削減を実現します。加えて、エネルギー消費、ゲストの嗜好、運営効率の監視に不可欠なリアルタイムのデータ分析を可能にします。 クラウドベースのプラットフォームを通じてホテルシステムを統合することは、シームレスな運営効率、ゲストの満足度、サステナビリティを実現するために不可欠です。クラウドコンピューティングによって強化されたIoTとAI技術で、ホテルをスマートでサステナブルなものへ変えていきます。 例えば、IoTセンサーがエネルギーや水の使用量をリアルタイムで監視・調整、AIアルゴリズムがデータを分析してパターンを特定し、最適化を提案します。このエコシステムは、EVとAVのインフラをサポートし、カーボンフットプリントの削減とゲスト体験の向上のための実用的なインサイトを提供します。 ホスピタリティ業界におけるサステナビリティは、業務の効率化にとどまらず、再生可能エネルギー源や新たな輸送ソリューションの採用にも及んでいます。太陽光パネルや風車などの再生可能エネルギー源のクラウドベースの監視・管理システムにより、施設やEV充電ステーションが効率的かつサステナブルな運営を実現しています。 例えば、ウィンドワード諸島では、再生可能エネルギーとEV充電インフラを統合することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減し、環境保護に取り組んでいます。 クラウドやSaaSプラットフォームへの移行は、従業員の能力を高め、ゲストにサステナブルな取り組みに参加してもらうための取り組みを支えるものです。デジタルトレーニングプラットフォームは、従業員がサステナビリティ目標に貢献する能力を高めるため、サステナビリティ、EVやAV技術、CSRの実践について従業員を教育するためのスケーラブルなソリューションを提供します。エコロッジの eラーニング・イニシアチブは、テクノロジーを活用することで、従業員の間に環境管理文化と社会的責任を育み、将来のテクノロジーの進歩とサステナビリティへの影響に対応できるようになることを例証しています。 効果的なCSRやESG戦略には透明性と説明責任が不可欠です。クラウドベースのデジタルツールは、コンプライアンスの遵守、サステナビリティレポート、リアルタイムでのモニタリング、透明性やステークホルダーの参加向上を促進します。 クラウド技術を利用したビスタホテルズグループのデジタルサステナビリティダッシュボードは、エネルギー消費量、水使用量、廃棄物管理、EV充電ステーションの利用状況に関するデータを、ステークホルダーにリアルタイムで提供します。この透明性は、投資家からの信頼とゲストのロイヤルティを高め、ホテルのサステナビリティと社会的責任への取り組みを実証します。 大手ホテルチェーンのなかには、テクノロジーを通してCSRやESGへの取り組みを実施しているところもあります。これらの取り組みは、エネルギー効率や廃棄物の削減から、地域社会の支援やゲスト体験の向上まで多岐にわたります。今回はその一例をご紹介します。 マリオット・インターナショナルは、CSRとサステナビリティに関する取り組みの総合プラットフォームとして、サーブ360を作りました。この取り組みでは、使用水量や二酸化炭素排出量および廃棄物の削減と、サステナブルな資源調達などのゴールを掲げています。マリオットはテクノロジーを多用途で活用しています。例としては、施設でエネルギー効率のよいシステムの使用、使用水量削減やエネルギー削減をねらったスマートルームテクノロジー、ゲストへサステナブルな取り組みの実践を促すデジタルプラットフォームがあります。 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。 ヒルトンの「ライトステイ」は受賞歴を持つパフォーマンス測定システムで、系列ホテルにて環境への影響を減らすために使われています。ライトステイは全ホテルのエネルギー消費量、使用水量、廃棄物量、二酸化炭素排出量を測定・追跡するためのフレームワークを提供します。このシステムにより、ホテルは改善の余地がある部分を特定し、エネルギー効率の高い照明や空調システムの導入、革新的なテクノロジーの活用による資源使用の効率的な管理など、環境フットプリントを削減するための具体的なプロジェクトを実施することができます。 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。 IHGは、IHGグリーン・エンゲージシステムを導入しています。これは、ホテルがカーボンフットプリントやエネルギーおよび水の消費量、二酸化炭素排出量、廃棄物管理の状況などを測定・追跡・報告できるオンライン・サステナビリティプログラムです。このシステムは、環境への影響の抑制や全体的なサステナビリティ改善に向けたアドバイスを提供します。例としては、エネルギー効率の測定、廃棄管理、節水対策などがあります。また、IHGはデジタルゲスト体験にも力を入れており、紙の使用量を減らし、効率を高めています。 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。 アコーのプラネット21プログラムとは、サステナブルな発展に対するグループの取り組みです。このプログラムは、食品と飲料のサステナビリティや、エネルギーや水の使用量の削減、そして生物多様性に力を入れています。アコーはテクノロジーを利用して、エネルギーや水の使用量を監視し、デジタルソリューション(紙の使用量を削減するためのデジタルチェックイン・チェックアウトなど)を通じて廃棄物を削減しています。また、アプリやデジタルプラットフォームを通じて、ゲストや従業員にサステナブルな取り組みを呼びかけています。 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。 ハイアットの環境サステナビリティ戦略は、エネルギーや水の使用量の削減、サステナブルな資源調達、廃棄物削減を目指しています。ハイアットはテクノロジーを様々な形で活用しています。例としては、ホテルのエネルギー管理システム導入による暖房、換気、空調(HVAC)性能の最適化や、節水技術の利用による使用水量の削減があげられます。また、デジタルプラットフォームを通じてゲストに環境保全の取り組みに参加してもらっているほか、グリーンプログラムへの参加も奨励しています。 詳しくはこちらのサイトをご覧ください。 これらのホテルチェーンは、CSRやESGへの取り組みにテクノロジーを統合することで、サステナビリティや 社会的責任を大幅に強化していることを例証しています。デジタルツールやプラットフォームを活用することで、環境への影響を監視・削減するだけでなく、サステナビリティの問題に関してゲストや従業員と関わり、事業を展開する地域社会に積極的に貢献しています。 この変革ビジョンを採用することで、ホスピタリティ業界は、現代の旅行者の期待に応えられるほか、業務効率を高め、デジタル時代のCSRの新たな基準を確立することができます。サステナビリティとイノベーションへの取り組みは、ホスピタリティ体験を再定義し、よりサステナブルで責任ある未来に向けた世界的な動きを引っ張る先駆者として、業界を位置づけるでしょう。 そのためには、イノベーションを続け、協力し合い、ゲストやステークホルダーからの期待を深く理解することが必要です。ホスピタリティ産業がこの変革の道へと踏み出すことで、サステナビリティや社会的責任に関する新たなベンチマークが設定され、すべての人々にとって豊かな未来が約束されることでしょう。 テレンス・ロンソンはPertlink Limitedの取締役。香港理工大学の客員講師を務めるほか、世界的な業界イベントの司会や講演、さまざまな諮問委員会の委員を務めています。
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