大型リゾートが実践した、閑散期のRevPAR改善法 

cliff side bar

ストーリーの背景 : 

「私がこの90エーカーのリゾートの収益管理を引き継いだのは、2年前のことです。 
崖の上に立ち並ぶヴィラ、インフィニティプール、サンセットバー など、景観は申し分なく、ゲストからの評価も非常に高いものでした。 

ところが、私にはどうしても気になる点がありました。 
宿泊以外のサービスに、ほとんどのお客様が関心を示していなかったのです。 

スパの利用は日によってばらつきがあり、ルームサービスは可能性を秘めていながらも売上は今ひとつ。ヨガやフローティングブレックファストといった人気のアクティビティも、数字としては期待ほどの成果が出ていませんでした。 

とくに閑散期には、わずかなアップセルが収益を大きく左右します。そんななか、TRevPAR(販売可能客室1室あたりの総収益)をどう伸ばすかが、最大の課題となりました。」 

(バリ島リゾート|レベニューマネージャー歴5年) 
JP Manager

大型リゾートでは、サービス提供の網羅性に関して共通の課題を抱えています。 

アップセルとなると、その難易度はさらに上がります。 

敷地が広いためゲストは分散し、スタッフとの接点も限られがち。さらに、スタッフは日々の基本対応に追われ、それ以上のご案内まで手が回らないのが現実です。 

どれだけ質の高いスパがあり、絶景を望めるダイニングが用意されていても、あるいは特別な体験プログラムが整っていたとしても、それらが“適切なタイミング”で案内されなければ、ゲストの目に留まることはなく、結果として予約にもつながりません。 

現代の旅行者は、「即時性」と「オンデマンドの利便性」をサービスに求めています。スタッフの業務負荷を増やさずに、こうした期待にどう応えるか。多くのホテルやリゾートがその答えとして注目しているのが、音声AI(Voice AI)技術の導入です。 

たとえば、Aiello One のようなワンストップソリューションは、大掛かりな設備投資を必要とせず、導入からわずか3カ月で電話対応件数を67%削減した事例もあります。 

その理由はシンプル。よくある質問に、客室内のAI音声アシスタントが自動で対応するからです。 

フロントに電話をかける代わりに、ゲストは声で尋ねるだけでOK。 
「バーは何時から開きますか?」「バギーは予約できますか?」「今日のヨガスケジュールは?」「スパは17時以降も利用可能?」 

こうした繰り返し発生しやすいが時間を取られる問い合わせを、AIが即座に処理します。 

結果、スタッフの業務負担が軽減され、本来注力すべき高付加価値サービスの提案に集中できるようになります。例えば、ハタヨガセッションやハーブジュース体験パッケージなど、収益性の高いオファーをより積極的に案内することが可能になります。 

これは単なるテクノロジー導入の話ではなく、サービス提供の在り方そのものを再構築する試みです。スマートなツールを活用することで、スタッフの潜在力を引き出し、同時にゲスト体験も向上させる——その両立を実現する道筋が、今、明確になりつつあります。 

これまでリゾート内では、ゲストからの依頼がチーム間で何度も中継されていました。「バギーを呼んでほしい」「お水を持ってきてほしい」といった電話が入るたび、スタッフは手間をかけて伝言を回す必要があり、時間と労力のロスが積み重なっていたのです。 

現在では、TMS Pro(タスク管理システム)の導入により状況が一変し、客室内の音声アシスタントからのリクエストは、そのままシステムに送信され、適切な担当者に自動で割り当てられ、30秒以内に受付が完了されます。スタッフの負荷を軽減しつつ、ゲスト対応のスピードと正確性が大幅に向上しています。 

JP aerial view

多くの宿泊施設において、ゲストの「滞在目的」や「特別な事情」が把握されるのは、チェックイン後が一般的です。ハネムーン、記念日、サプライズ旅行といった特別な滞在ニーズに対し、適切なサービス提供の機会を逃すケースも少なくありません。 

しかし近年、会話型AIの導入により、そうした課題の解消が進んでいます。 

たとえば、AielloのGuestWebは、ホテルの公式サイトに直接組み込むことができるAIチャットボットです。ゲストが予約前に「ハネムーンプランはありますか?」「ロマンチックな演出は可能ですか?」などと質問すると、AIが即座に関連サービスを提案。その時点でゲストの意図や期待値を把握できるため、現場スタッフは到着時にそれを前提とした対応が可能になります。

たとえば、チェックイン時にヒアリングを行うことなく、あらかじめ記念日用の演出や特別ディナーの案内ができるようになり、ゲスト満足度の向上に直結します。 

さらにGuestWebは、アプリ不要・多言語対応の設計で、滞在中もレストラン予約やアクティビティ参加(例:サップ、ヨガなど)をゲスト自身がスムーズに行えます。また、客室内の音声アシスタントと連携することで、チェックイン直後に「本日の体験プログラム」や「期間限定パッケージ」の案内を音声で行うことも可能です。これにより、ゲストの関心が高いタイミングで自然なアップセルが実現します。 

このように、予約前から滞在後までを通じて一貫したパーソナライズ体験を構築する仕組みは、単なる接客支援にとどまらず、宿泊施設の収益最大化にも貢献します。競争の激しいホスピタリティ業界において、テクノロジーによるサービス設計は、持続的な差別化戦略として極めて有効です。 

JP Cooking workshop

従来のゲスト対応は、1対1のコミュニケーションが基本でした。電話や対面でのリクエスト対応はパーソナルである反面、スタッフへの負荷が高く、繁忙期にはサービスレベルの維持が困難になるという構造的な課題を抱えていました。 

しかし今、ホテル業界では「スケーラブルな接客」へのシフトが進んでいます。 

客室内の音声アシスタントWebチャットボットを活用することで、ゲストのリクエストを自動で受付・分類・転送。たとえば「タオルをもう1枚」「レストランを予約したい」といった要望は、適切な部署に自動送信され、処理が即座に開始されます。この仕組みによって、サービススピードが向上するだけでなく、フロント業務の負荷軽減や部門間の連携強化にもつながります。 

さらにAIは、単なるサポートツールにとどまらず、ゲストへのさりげない情報提供やアップセルにも効果を発揮します。音声アシスタントやチャットボットは、自然な会話の流れの中で、スパのプロモーション、SUPレッスン、ローカルツアーなどをゲストに紹介。あくまで控えめに、しかし確実にゲストの関心を引くことで、人的リソースを使わずに収益機会を創出します。 

重要なのは、これは単なる業務自動化ではないという点です。AIによって実現するのは、よりスマートで効率的、かつ人間らしいホスピタリティの再設計です。 

AIによる業務効率化やアップセル効果は、目に見える成果です。 
しかし、AI活用の本質的な価値は、蓄積されたゲストとのやり取りから生まれるインサイトにあります。 

音声アシスタントやチャットボットを通じて日々交わされる無数のリクエストは、ゲストのニーズや不満、潜在的な期待を映し出すリアルタイムのフィードバックループです。 

たとえばあるリゾートでは、高齢のゲストから「ビーチ後の保湿ローション」に関する問い合わせが一定の頻度で発生していることに気づきました。 

この発見は、単なる消耗品の補充にとどまりません。 

客層別の商品戦略や滞在体験の再設計、ブランド価値の再定義といった、より本質的な経営判断につながるヒントとなるのです。 

これらのインサイトは、従来のアンケートや定量調査では決して浮かび上がってきません。自然な会話の中にだけ存在する、生きたデータです。 

AIがデータを集める時代はすでに過去であり、今求められるのは「データの声を聞く力」です。ゲストの言葉をただ記録するのではなく、そこからまだ見ぬ需要と機会損失を可視化する力こそが、今後の競争優位を左右します。 

御社でも、同様の成果を実現できます。 

ぜひ一度ご相談ください